Model-Basedシステムズエンジニアリング(MBSE)が求められている背景には、大きく5つのポイントがあると言えます。
- 複雑さを扱い易くする「段階的詳細化」
- 開発に関わる膨⼤な情報から「⾼度な判断が必要」
- 求められる⾼い「変更分析および変更管理能力」
- ⾃由度の⾼いパートナーシップや調達への迅速な対応
- 開発環境もこうした変化に合わせて「急速に進化中」
『Model-Basedシステムズエンジニアリング(MBSE)』とは、電算機(コンピューター)を活用してシステムズエンジニアの仕事を支援し、システムズエンジニアリングを進めていくことです。
“Model-Based”の『Mode(モデル)』とは、システム開発に関する情報や、これら情報要素を互いの関係性とともに構造化し活⽤可能にした「情報の構造体」のことを指します。
システム開発を効率化、高度化させるためには、非常に大規模で複雑なシステムを扱いやすくし、高度な判断、変更分析や変更管理、迅速な対応、変化に合わせた開発環境が必要です。
なぜ今、Model-Basedシステムズエンジニアリング(MBSE)が求められているのか、ご説明していきましょう。
1.複雑さを扱い易くする「段階的詳細化」
• システムを表現する粒度を複数階層で制御し、俯瞰と詳細が常に同期された状態を実現する
我々が開発するシステムそのものは、複雑化・大規模化しています。
そのため、非常に大規模で複雑なシステムを扱いやすくするために、「段階的詳細化」が求められています。
「段階的詳細化」することによって、システムに関する情報はより膨大になります。
システムズエンジニアはこの膨大な情報をうまく管理し統制するために電算機(コンピューター)の力を最大限に活用して、システムズエンジニアリングを効果的・効率的に実施していきます。
これが、Model-Basedシステムズエンジニアリング(MBSE)が求められている理由の一つであると言えるでしょう。
2.開発に関わる膨⼤な情報から「⾼度な判断が必要」
• 数値データだけでなく、⽬的、制約、意図等も併せて扱う
システムズエンジニアには、この大規模・複雑化するシステム開発において、「高度な判断」が求められます。
高度な判断を迅速に行うためにも、システムに関する情報構造体をうまく活用し、タイムリーに仕事を進めていくことが必要なのです。
しかし残念ながら、システムのデザインや開発はウォーターフォール(Waterfall)、すなわち滝のように順序だてて次々と仕事が進んでいくということはありません。
高度な判断のために、数値データだけでなく、⽬的、制約、意図等も併せて扱うことによって、頻繁に、そして反復的に変更が行われるのです。
3.求められる⾼い「変更分析および変更管理能力」
• 複数領域にまたがる変更インパクト分析
システムズエンジニアは、頻繁に行う変更を管理し、この変更の分析を行いながら、システムズエンジニアリングを進めていくことになります。
そのため、大量に変更した情報を分析し、管理するために電算機(コンピューター)の力をうまく活用して、システム開発を進めていきます。
このような「変更分析および変更管理能力」もModel-Basedシステムズエンジニアリング(MBSE)に求められている大きな役割の一つなのです。
4.⾃由度の⾼いパートナーシップや調達への迅速な対応
• 意思決定の伝達、情報のやり取り、などの管理とスピードをバランスする
昨今のシステム開発においては、新しいパートナーシップや海外への調達などといった、今までになかったコミュニケーションが、エンジニアリングの現場にも求められています。
しかし、その都度、新しい情報や資料をつくっていては、エンジニアリングが妨げられてしまいます。
こうした折にでも、システムに関する情報をシステムの情報構造体から抽出し、うまく活用することでエンジニアリングを妨げることなく、さまざまなコミュニケーションを実行していくことが大切です。
これもModel-Basedシステムズエンジニアリング(MBSE)に求められている大きな役目だと言えるでしょう。
5.開発環境もこうした変化に合わせて「急速に進化中」
• CAE・MBDとの相互連携、PLMの進化、OSLCへの期待の増⼤
大規模で複雑化するシステム開発において、システムズエンジニアの仕事を助け、膨大な情報を管理し、たくさんの関係者にコミュニケーションしていくことが求められています。
● CAE(Computer Aided Engineering)・MBD(Model Based Development:モデルベース開発)との相互連携
● PLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)の進化
● OSLC(Open Services for Lifecycle Collaboration)への期待の増⼤
など、システム開発の環境もこのような変化に合わせて急速に進化する必要があります。
そのため、いかに効率化、高度化していくかということも、Model-Basedシステムズエンジニアリング(MBSE)が求められている背景の一つであると言えるでしょう。
今回は、5つの背景から、なぜ今「Model-Basedシステムズエンジニアリング(MBSE)」が求められているかについて、解説しました。
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