Model-Basedシステムズエンジニアリング(MBSE)について、誤解なく本当の姿をお伝えするうえで、大きく5つのポイントがあると言えます。
- MBSEは「数値解析やシミュレーションの話ではない」
- システムズエンジニアの仕事を「効率化・⾼度化するということ」
- MBSEにおける「システムモデル」とは「情報の構造体」を指す
- モデリング(モデル作り)だけでなく「モデル活⽤」を考えることが重要
- MBSEを⽀える「セマンティック技術」
今回は、Model-Basedシステムズエンジニアリング(MBSE)に対するよくある誤解について、ご説明していきましょう。
1.MBSEは「数値解析やシミュレーションの話ではない」
- 「モデル」という⾔葉から、MBD(モデルベース開発)や1DCAE(設計支援)などの数値解析を軸とした話であると誤解しがち
- 数値解析やシミュレーションを包含はするが、そのものの話ではない
MBSEは「数値解析」や「シミュレーション」単体の話ではありません。
「数値解析」や「シミュレーション」を包含しますが、そのものの話ではなく、システム全体を見渡し進めていくシステムズエンジニアリング全体の話であるということができます。
数値解析の話でもなく、制御の話でもなく、さまざまな分野や部署を横断したシステム全体を俯瞰している、この視座の話であるというところがポイントです。
システムエンジニアがシステム全体に渡る視座を持ち、「情報構造体(システムモデル)」を作り活用しながら、
多くの分野を横断、統率して大規模・複雑な開発を高度化し効率的に進めていくことを指すと言えるでしょう。
2.システムズエンジニアの仕事を「効率化・⾼度化するということ」
- システムズエンジニアが、電気・機械・制御・通信・ヒューマンインターフェースなどシステム全体を⾒渡して、バランスを取り、多くの関係者と開発を進めていくためにモデル(情報構造体)を作成し、活⽤するという話
MBSEでは、システムズエンジニアが電気・機械・制御・通信・ヒューマンインターフェースなどシステム全体を見渡して、
バランスを取り、そしてそれぞれの専門家や専門部署と多くのコミュニケーションをしながら開発を進めていくために「モデル(情報構造体)」を作り、活用しながら、開発を進めていきます。
そしてこのシステム全体の開発を進めていくために「システムズエンジニア」という役割があります。
このように、システムズエンジニアの仕事を効率化・⾼度化させていくことが、Model-Basedシステムズエンジニアリング(MBSE)の本当の意味です。
3.MBSEにおける「システムモデル」とは「情報の構造体」を指す
- 記述型モデル(Descriptive Model)と分析型モデル(Analytical Model)の両⽅を適切に使い分けて、また組み合わせて、システムの全容を⽰す
- システムの全容に関する情報要素が互いの関係性とともに構造化され活⽤可能になった「情報の構造体」がMBSEにおける「システムモデル」である
「モデル」という言葉についての誤解もお伝えしておきましょう。
一般的にいま日本のエンジニアリングの世界では「解析モデル」のことを指しています。
すなわち「数値演算処理ができるモデル」のことを指します。
しかしシステムズエンジニアリングにおけるモデルとは、論理的な構成や論理的な関係性を現わす「記述型モデル」についてもモデルと呼ばれます。
「解析モデル」と「記述モデル」の両方を使って、システムの全体像を現わしていきます。
4.モデリング(モデル作り)だけでなく「モデル活⽤」を考えることが重要
- システムモデルの活⽤とは、開発の中で⽬的に応じて、情報の構造体から任意の情報を抽出する「クエリ技術」、抽出した情報を任意の形式で表す「表現技術」(Representation)を指す
- 「情報の構造化技術」「クエリ技術」「表現技術」が揃うことで課題を解決し、開発に⼤きく貢献するMBSEが実現できる
「モデル」と聞くと必ず出てくる言葉が、モデルを作るという意味である「モデリング」です。
MBSEにおいては「モデリング」ももちろん大事なのですが、作った情報構造体をエンジニアリングのさまざまなシーンにおいて表の形式で取り出して活用したり、図の形式で取り出してコミュニケーションしたり、モデルを活用することも重要です。
そのため「モデリング」だけではなく「モデルの活用」を考えることも、MBSEにおいては大変重要なポイントになってくると言えます。
5.MBSEを⽀える「セマンティック技術」
- 情報の意味を電算機にとって理解できる形で構造化し、電算機に情報収集や表⽰などの処理を⾏わせる技術
- 「システムモデル」は、意味を含んだ情報の構造化、意味の構造を辿った情報クエリ、意図を持った情報表現により、システムズエンジニアの判断や意思決定を⽀援、強化する
MBSEを支える基本技術としては「セマンティック技術」が挙げられます。
電算機が情報と情報の関係性を理解し、情報の意味を理解できる形で構造化し、電算機に情報収集や表⽰などの処理を⾏わせることによって、システムズエンジニアの仕事を支援する技術のことを指しています。
MBSEでは、システムズエンジニアが多くの分野を横断し統率して、大規模・複雑な開発を進めるために「情報構造体(システムモデル)」を作り、活用していきます。
この情報構造体(システムモデル)を支えているのが、電算機が情報の意味や関係性を理解してシステムズエンジニアが欲しい情報を欲しい形で出すことができる「セマンティック技術」です。
このセマンティック技術をうまく使って、大規模・複雑になるシステム開発を支える大きな情報構造体を、開発のさまざまなシーンの中で、さまざまな専門性を部署や専門家に対するコミュニケーションで活用していくことが、MBSEの本当の姿だと言えます。
このセマンティック技術を開発のさまざまなシーンで活用していくことが、MBSEの本当の姿だと言えるのです。
今回はMBSEに対する誤解として5つのポイントからお伝えしました。
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