今、日本において自動車の開発分野では、安全機能だけではなく、設計全体の根拠と確からしさを求められるようになりました。
また自動車だけではなく、電気、重工業、また様々な業界において、システム全体を考え、システム全体のバランスを取り、分野や業界、専門性を横断して、開発全体、取り組み全体を推進していくシステムズエンジニアが求められています。
今回は、なぜ今、様々な開発においてシステムズエンジニアが求められているのか、お伝えしていきます。
○なぜシステムズエンジニアか?
- 求められるより「高度な設計説明責任」
- 指数関数的に増加する「設計の複雑さ、検証の難しさ」
- 必須になる「高度なシステム分析と判断能力」
- 求められるエンジニアリングにおける「高い戦略性」
- “モノづくり”の「視野の拡大」
なぜ今日本において、システムズエンジニアが求められているか、ということについて上記の通り、大きな5つのポイントで考えることができます。
どのようなものなのか、順番に解説していきましょう。
1.求められる、より「高度な設計説明責任」
• 機能安全、ISO26262
• 米国Department of Transportation, NHTSA “Automated Vehicles for Safety”
求められる、より「高度な設計説明責任」というものが挙げられます。
自動車の開発における機能安全「ISO26262」に代表されるような、設計に対する説明ということが昨今、強く求められるようになってきました。
安全機能だけではなく、設計全体の根拠と確からしさを求められる、このような取り組みが自動車分野だけではなく様々な分野で拡がっています。
2.指数関数的に増加する「設計の複雑さ、検証の難しさ」
• ADAS、自動運転、自動車のネットワーク化、各種機能部品の電動化
• ハイパーコネクティビティ、次世代移動通信システム
• クラウド化、Everything as a Service、 XaaS
設計そのものが非常に複雑となり、そして検証が大変難しくなってきていると言うことも、システムズエンジニアが求められる大きな要因の一つです。
自動運転をはじめとする、コトとモノが高度に融合した、また非常に巨大なシステムの開発、これを分野や業界、専門分野を横断して進めていくことが求められています。
こうしたシステムの開発やデザインを進めていく中で、それを分析しまた、判断をしていくということが求められているのです。
3.必須になる「高度なシステム分析と判断能力」
• システム全体を見渡したFTA(演繹的リスク分析)
• システムのフェールを検知し、システムをフェールから守り、リカバリーする方式を柔軟に検討し設計する
例えば、システム全体を見渡して、演繹的にリスク分析を行う「FTA」、これを専門分野を横断して行う必要があります。
そして見つけたリスクに対して、そのリスクからどのようにユーザーやシステムを守り、そのリスクからリカバリーをしていくのか、柔軟に検討し設計しなければなりません。
そのようなことを、システム全体を見ながら考えていくことが求められます。
これもシステムズエンジニアに求められる大きな役責の一つです。
4.求められるエンジニアリングにおける「高い戦略性」
• 設計、検証の効果的な外出しによる開発工数削減
• モジュール化、共通アーキテクチャ、インタフェース標準による開発コスト削減
• ローカル/グローバルの自在な調達、ローカル/グローバルな事業展開
こうしたエンジニアリングやその分析を、無限の時間をかけて、無限の工数をかけてやっていくことはできません。
そのため、高い戦略性を持って、再利用する設計、モジュール化する部分、例えば協業して外注で行っていく設計や検証といったことに対して、戦略性を持って進めていく必要があります。
このような「高い戦略性」においても、システムズエンジニアという役割が求められています。
5.“モノづくり”の「視野の拡大」
• IoT
• Industry 4.0、スマートファクトリー
• Reference Architecture Model Industry 4.0(RAMI4.0)
• Smart Grid Architecture Model(SGAM)Framework
モノづくりの視野そのものが大きく拡大しています。
またIoT技術を使い、モノづくりの現場はさらに高度化していきます。
Over The Air、いわゆる「OTA」と呼ばれるような仕組みのように、ライフサイクル全体を見渡して、デザイン、エンジニアリングをしていくことが求められてきています。
モノづくりの視野の拡大という点も含め、これら5つの点から、今、自動車だけではなく、電気、重工業、また様々な業界において、
システム全体を考え、システム全体のバランスを取り、分野や業界、専門性を横断して、開発全体、取り組み全体を推進していくシステムズエンジニアが求められていると言えるでしょう。
アイキャッチ画像:Photo by ThisisEngineering RAEng on Unsplash
画像1:Photo by Aleksejs Bergmanis from Pexels
画像2:Image by Gerd Altmann from Pixabay